
皆さんは、コンビニのセブンイレブンが昔やっていた、「ある面白い取り組み」をご存知でしょうか?
それは、まだお仕事を始めたばかりの学生さんや、パートの主婦の方々に、お店の大事な「商品の仕入れ」を全部任せてしまう、というものでした。普通に考えたら、少し怖いことですよね。「もし注文しすぎて売れ残ったらどうしよう…」と、店長さんならハラハラしてしまうかもしれません。
でも、蓋を開けてみると驚くようなことが起きました。ベテランの社員さんが管理するお店よりも、地元のパートさんが自分で考えて注文しているお店の方が、なぜか商品がたくさん売れるようになったそうなのです。
どうして、そんなことが起きたんでしょうか? もしかするとこのお話の中に、私たちが悩んでいる「採用」や「人との関わり方」を良くするヒントが、隠れているような気がするのです。
今日は、難しい経営の話ではなく、「どうすれば人は仕事を楽しんでくれるのかな?」という、人の気持ちのお話をさせてください。読み終わる頃には、きっと誰かに「任せてみようかな」と思えるようになっていると思いますよ。
セブンイレブンで大切にされていたのは、スタッフさん一人ひとりに「お店のことを自分ごととして考えてもらう」ということだったそうです。
レジの向こうにいるアルバイトさんの頭の中では、実はこんな素敵なことが起きていました。
求人広告を見ると、「マニュアルがあるから簡単です」と書いてあるのをよく見かけますよね。もちろんそれも安心材料の一つですが、裏を返せば「言われた通りにやってね」と言われているようで、少し寂しい気もします。
一方で、このコンビニの仕組みは「あなたの予想で、お店を動かしてみていいよ」と信じてもらえている状態です。
私たちも、細かく指示を出して「あれやって、これやって」と言うよりも、「どうしたらお客さんが喜んでくれるかな?」と問いかけてみる。そうやって投げかけられた瞬間、それは「やらされる作業」から、その人が主役になれる「自分の仕事」に変わっていくのかもしれません。
「でも、そんな責任のあることを任されたら、大変で辞めたくならないかな?」
そんなふうに心配される方もいらっしゃるかもしれません。でも、人の心って不思議なもので、「誰かに信頼して任されること」って、時給が上がること以上に、心が満たされることだったりするんです。
想像してみてください。自分の読み通りにおでんが完売した時のことを。その学生さんは、きっとお店の裏でガッツポーズをしているはずです。「やった! 私の予想が当たった!」って。
その瞬間に感じているのは、「自分はこのお店の役に立っているんだ」という実感や、「ここに居てもいいんだ」という安心感かもしれません。
福祉の現場でも、同じことが言える気がします。「こんなことをやってみたい!」とスタッフが言ってくれたら、「前例がないから」と止めるのではなく、「いいね、どうやったらできるか一緒に考えよう」と返してみる。
もし失敗しても、「最後は私が責任を取るから大丈夫だよ」という空気がそこにあれば、みんな安心して挑戦できますよね。そうやって自分の頭で考えて動ける場所だからこそ、ずっとここで働きたいと思えるのかもしれません。
そうはいっても、「そんなふうに働けるのは、最初から優秀な人だけでしょ?」と思ってしまうかもしれません。でも、本当にそうでしょうか。
活躍していたコンビニのスタッフさんたちも、最初は普通のご近所さんや学生さんでした。特別な資格を持っていたわけではありません。ただ、「任せてもらえた」から、隠れていた力が引き出されただけなのかもしれません。
だから採用の時も、今持っているスキルだけで判断するのではなく、もっと「その人の内側にあるもの」を見てみてもいいんじゃないでしょうか。
「自分はまだまだです」と思っている人ほど、周りのことを吸収しようとする素直さを持っています。そういう人に、「君ならできるよ」と伝えて任せてみる。そうすると、驚くほど素敵に成長してくれることがあるんです。
スキルは後からでも覚えられますが、その人の持つ「雰囲気」や「素直さ」はずっと変わらない宝物です。だからこそ、そんな原石のような人に出会えたら、それだけで採用は大成功なのかもしれませんね。
ここまで「任せる」お話をしてきましたが、リーダー自身が「自分がしっかりしなきゃ」と頑張りすぎてしまうこともあると思います。「自分が全部わかっていないと、示しがつかない」って、肩に力が入ってしまいますよね。
でも、これからの時代は、「完璧じゃないリーダー」の方が、かえってうまくいくこともあるような気がします。
私は、自分が計算が苦手なことや、不器用なことを隠さないようにしています。「ごめん、ここ苦手だから助けてくれない?」って、素直に言ってみるんです。そうすると、不思議なことが起こります。
「しょうがないですね、私がやっておきますよ!」
そんなふうに、周りの人が自然と支えてくれるようになるんです。リーダーが隙を見せることで、みんなが「私がやらなきゃ」と思ってくれる。「弱さ」を見せることが、実はチームの力を引き出すスイッチになるのかもしれません。
求人の時も、良いところばかりを見せようとしなくて大丈夫です。「うちはまだこんな失敗もしているし、足りないところだらけです。だから、あなたの力を貸してほしいんです」と、正直に伝えてみる。
そんな人間味のあるメッセージの方が、「じゃあ、一緒に作っていこうかな」と思ってくれる、温かい仲間が集まってきてくれるはずですよ。
最後に、これから素敵な仲間を見つけたいと思っている方へ、一つだけお伝えしたいことがあります。
求人のことを、「足りない労働力を埋める作業」だと思わないでほしいんです。「時給いくらで、これだけの作業をしてくれる人」を探す条件合わせのような採用は、もう終わりにしてもいいのかもしれません。
これからの採用は、「私たちの想いに共感して、一緒に歩んでくれる仲間」を探すこと。
人は、「信頼されて、任されて、自分の頭で考える」時に、一番良い顔をして働いてくれます。だから、求人の文章でも、条件だけじゃなく、あなたの素直な気持ちを伝えてみてください。
「うちはマニュアル通りじゃありません。あなたに任せます。何かあったら私たちが守ります。だから、一緒に面白いことをやりませんか?」
そんなふうに、相手との「関係性」を提案すること。「誰かの役に立ちたい」という優しい気持ちを持っている人に、「あなたが主役になれる場所があるよ」と教えてあげること。
完璧じゃなくていいし、不器用でもいい。ただ「信じて任せる」という気持ちさえあれば、きっと素敵な出会いが待っていると思います。ぜひ、そんな温かい採用を始めてみてくださいね。

個別ミーティング担当
阿久津和宏(行政書士・認定支援機関)

掲載の情報・画像など、すべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。
Well Consultant合同会社